六つ年下の幼馴染は、私のことをめーちゃんと呼ぶ。

 めぐみだから、めーちゃん。

 それはいいんだけれど、幼い彼は最近色気づいてきたのか、私と会うたびに「めーちゃんと結婚する」と言うのだ。

 その言葉自体は可愛いけれど、どうせ大きくなったらそんなことを言ったことも忘れて、彼は別の可愛らしい女の子と結婚するに違いない。

 今だけだからと思えば、有難うなんて言葉も出て来なくって、自分だってついこの間中学校に通えるようになったばかりの癖に、私も一丁前のお姉さんになったつもりで「大きくなってから出直してきなさい」なんて言い返した。

 可愛げのない言葉だけれど、それでも幼馴染の彼はめげずに、毎日私に愛の言葉を囁くのだ。

「大好き、めーちゃん」

「大きくなったら結婚してね」

「めーちゃん、ぎゅうってして!」

 甘えたな彼を抱き上げて、ぎゅっと抱きしめる。

 ふわりとミルクの香りが鼻先をくすぐれば、ほら、まだ彼はこんなに幼いのだぞと、誰かから言われたような気がした。

 それがなんだか悲しくて、思わず口をついて出たのは憎まれ口だ。

「小っちゃいな、こんなにチビの癖して私と結婚なんて出来るの?もっと他にいい子いるでしょ?」

 本当になんで私?なんて、イラついた気持ちを大人げなくぶつけてしまった。

 すると彼は子供らしく頬を紅潮させて怒りを露わにする。

 それが恒例の行事のようになっていったのは、私が彼のその時の顔を気に入ってしまったからだろう。

 頬を膨らませて、赤くして、それが可愛らしくてからかう様になった。

「チビは出直してきなさい」

「チビってまた言った!めーちゃんの馬鹿!」

 けど、それがいつの頃だったか――そうだ、私が高校生になった頃だ。

 にやっと笑って幼馴染はこう切り返してきたのだ。

「俺、去年一年間の間に、八センチも身長伸びたんだよ?めーちゃん追い越すなんて直ぐだ。今に見てろよ、チビなんて言えなくしてやるから」

「ふうん?で?」

 興味ないとばかりに半眼まなこで言い放てば、彼はかっとなり、私に掴みかかってきた。

 手首を掴まれた時、その力の強さに思わず瞠目してしまう。

 彼は、こんなにも強かっただろうか?

「背を追いこしたら、もう逃がさないから」

 何から?なんて聞けなくて、思わず顔を逸らした私に、その顔は反則だろうと呻くように言った彼に、何が反則なのよと返せば、

「今更照れてんじゃねーよ。しかも、顔……真っ赤だし。何それ、すっげ可愛い。マジで反則だって……クソッ」

 可愛いのはあんたの照れて真っ赤になった顔だって、流石に言えなかった。

 だって、それを言ってしまったら、負けたみたいな気がするから。

 だから言ってやらない、あんたが私の背を追いこすまでは、好きなんて言葉は、絶対に言ってやらない。





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最初十二歳と六歳で、最後は十八歳と十二歳です。
年の差ぷまい。

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